Concept
「Reminiscence/レミニセンス」は、
”過去を偲ぶ”という意味を持つ「追憶」
オーナーシェフ葛原将季は、人生を豊かにするために最も大切なものは「思い出」であり、それこそが本当の豊かさであると考えている。
この店名を掲げ、自身のレストランで過ごす時間は、ただお腹を満たすためだけの場所としてではなく、その瞬間を良き思い出として記憶に残せるよう、料理やサービスのみならず、ここでしか得ることのできない唯一無二の体験とは何なのか自問自答を繰り返してきた。
まさにこの新店舗はレミニセンスの哲学を究極まで推し進め具現化したものである。
新しいステージとして選んだ場所は名古屋・車道。かつて尾張藩の別宅としてあった御下屋敷の建設のため石材を車で曳いて運んでいたことがこの町名の由来。このエリアは一部開発は進んではいるものの、昔ながらの住宅やマンションが今でも残る住宅街。細長くクランクした土地に建てられた店舗はメイン道路からも路地裏からもアクセスができ、レストランのメインエントランスはあえて狭い路地裏を選択した。
そこはまるで幼少期に登下校するときに近道として使っていた路地裏のようで、古くからある家の軒下には洗濯物が掛けられ、おばあちゃんが登下校する子供たちを温かく見守っているような情景が目に浮かぶ。
そんな昔の記憶に浸りながら裏路地を進むその先には重厚感のある扉がひっそりと佇む。
それは現在と過去の記憶を繋ぐタイムゲート。その扉をゆっくり開けると、夢の中に迷い込んだような白い別世界が現れる。その空間で目を瞑り、心を落ち着け、過去の記憶を思い出す。
記憶をたどりながらアプローチを進むと、その先には窓から光が差し込み、明確なビジョンが脳内に広がっていくのが感じられるだろう。
白を基調としたこの空間は、葛原が幼少期に雪遊びをした北国の記憶や、料理に対する哲学、自然の摂理といった、形を持たない”イデア”を造形化している。ゴツゴツした力強い造型と、不規則な曲面と流線的なカーブという、ある種相反する不調和で空間は、おぼろげな遠い記憶を辿ろうとしている脳内のイメージを表現している。
神秘的なアプローチでメインダイニングへと向かう長い廊下をゆっくりと歩き進める。
それは「追憶」のステージをさらに進めていくための重要なプロセスであり、この空間で様々な記憶が脳内を駆け抜ける。辿り着いた記憶のその先には”かまくら”を彷彿させるアーチが見えてくる。アーチをくぐると、そこには白と光で演出された神秘的なメインダイニングが広がっていく。
その空間は、まるで”かまくら”の中で揺らめくロウソクのように、伝統文様があしらわれた大円形のライトから柔らかな光が降り注ぎ、希成に彩られたヤコブケアの椅子に照らし出され、訪れるゲストを優しく包む。メインダイニングに身を置いた瞬間、この先にある未知なる体験に期待感と緊張感が一気に高まってゆく。
この空間で五感を満たす体験が脳内を駆け巡り、新たな記憶として刻まれ、感動をシナプスのように繋いでゆく。レミニセンスはまさに未来における「追憶」を生み出すレストランそのものである。